作品紹介
『アシガール』は、2017年9月23日から12月16日まで、NHK総合「土曜時代ドラマ」枠(土曜18時05分)で放送された全12回のタイムスリップ・ラブコメディです。原作は森本梢子の同名漫画(集英社『コーラス』『Cocohana』連載)、脚本は宮村優子。主演は速川唯/唯之助を演じた黒島結菜、相手役の羽木九八郎忠清を健太郎が務めました。時代劇枠でありながら、王道の恋愛コメディとして幅広い層に届いた異色作です。
物語の主人公・速川唯は、勉強も運動もからきしだが「脚力」だけは並外れた女子高生。弟・尊が作ったタイムマシンの試作機で、うっかり戦国時代へ飛ばされてしまいます。そこで出会ったのが、若き城主・羽木九八郎忠清。一目で恋に落ちた唯は、彼が数年後に討ち死にする運命にあると知り、「若君を守る」ためだけに現代と戦国を往復し、ついには足軽・唯之助として戦場を駆け抜けることを選びます。
設定は荒唐無稽ながら、唯の一途さと圧倒的な走力、そして戦国という命の軽い世界の対比が、笑いと涙を両立させました。放送終了後の反響を受けて2018年12月24日には続編『アシガールSP〜超時空ラブコメ再び〜』も制作。2021年1月に実施された「タイムスリップ作品で好きなドラマランキング」では、『テセウスの船』や『信長協奏曲』を抑えて堂々の1位を獲得しています。
話題になったポイント
「走る」だけで魅せた黒島結菜の身体表現
本作のヒロインに求められたのは、とにかく走ること。黒島結菜は野山を、城下を、戦場を全力で駆け抜け、その疾走そのものが物語の推進力になりました。武器も知略も持たない少女が、脚力ひとつで運命に抗う——このシンプルな構図が、視聴者の心を掴んだ最大の理由です。
時代劇枠で成立した本格ラブコメ
NHKの土曜時代ドラマといえば重厚な作品が並ぶ枠ですが、本作は徹底して「キュンとする」ことに振り切りました。唯と若君の距離が縮まっていく過程、身分違いの恋、そして現代と戦国を隔てる400年という壁。時代劇のフォーマットで少女漫画の王道を貫いたことが、新しい視聴者を呼び込みました。
第10話の兄弟対決が生んだ「神回」評
視聴者の間で「神回」として語り継がれているのが、羽木家の兄弟が対峙する第10話です。号泣を通り越して嗚咽したという声が並ぶ重厚な展開の直後に、唯のスクワットで大爆笑させる——この落差こそが『アシガール』の真骨頂であり、子どもから90代まで幅広い年齢層に愛された理由でもあります。
ロケ地ガイド
深谷エリア(唯が暮らす現代の街)
速川家がある現代パートの舞台となったのが埼玉県深谷市。学校、クリニック、公園、交差点と、市内各所が「唯の日常」として撮影されました。深谷はNHKドラマのロケ地として実績のある街でもあります。
- 東京成徳大学深谷中学校・高等学校:深谷市宿根。速川唯たちが通う高校として登場します。
- 小暮医院:深谷市中瀬。劇中の「速川クリニック」として撮影されました。
- 深谷城址公園:深谷市本住町。第2話で唯が「若君を守るために戦国に行かなきゃ」と決意する「黒羽城公園」として登場する、現代パートの重要スポットです。
- 深谷城址公園前の道:第1話で速川唯が自転車で走っていた道。公園とセットで訪れたい場所です。
- 浅間神社:深谷市人見。第3話で唯が「戦国で通用する身体」を作るためトレーニングしていた神社です。
- 田所町交差点:深谷市田所町。第3話で唯がご老人を背負ったり荷物を運ぶ手伝いをした交差点として使われました。
- 道路:深谷市西島町2丁目。第6話で、高校生姿の羽木九八郎忠清が不良に絡まれた木村先生を助ける場面が撮影されました。
戦国パート(茨城・つくばみらい)
物語の半分を占める戦国時代のシーンを支えたのが、NHKエンタープライズが運営する巨大ロケ施設です。
- ワープステーション江戸:茨城県つくばみらい市南太田。約1万2,000坪の敷地に江戸城大手門や武家屋敷、日本橋を中心とした町並みが再現された撮影専用施設で、本作では「黒羽城」として使われました。歴代の大河ドラマでもおなじみのロケ地です。なお一般公開は2020年3月31日をもって終了しており、現在は撮影専用施設として運営されています。
- 福岡堰さくら公園:つくばみらい市北山。第5話で唯之助と羽木九八郎忠清がデートに出かけた場所。桜の名所として知られ、春には約1.8キロの桜並木が咲き誇ります。
信州・甲州エリア(合戦と山林)
戦国の合戦シーンや山林の場面は、長野県富士見町と山梨県北杜市を中心に撮影されました。八ヶ岳南麓の雄大な自然が、戦国の空気を作り出しています。
- 八ヶ岳:長野県諏訪郡富士見町境。第1話で唯之助が羽木九八郎忠清と出会う山林として登場します。二人の物語が始まる場所です。
- 草原:同じく富士見町境。第1話で忠清が乗馬をして唯之助を木村政秀たちのもとへ届けた草原です。
- 立場川キャンプ場:富士見町立沢。第11話で高山勢の足軽に扮した唯之助が撃たれる河原のシーンが撮影されました。
- 蔵屋グリーンズから西北の山道:山梨県北杜市小淵沢町。最終話で伏兵に襲われた羽木成之たちを、忠清や悪丸たちが助けに入る山道です。
聖地巡礼のおすすめルート
深谷「速川唯の日常」半日ルート
JR深谷駅を起点に、市内のロケ地を巡るコースです。まずは深谷城址公園で唯が決意を固めた「黒羽城公園」の空気を味わい、深谷城址公園前の道を歩いて田所町交差点へ。車があれば浅間神社や小暮医院、東京成徳大学深谷中学校・高等学校まで回れます。学校や医院は現役の施設なので、外からの見学にとどめてください。深谷はネギと渋沢栄一ゆかりの街でもあり、あわせて楽しめます。
八ヶ岳南麓「戦国合戦」ドライブルート
中央道・小淵沢ICを拠点に、八ヶ岳周辺の草原、立場川キャンプ場、そして蔵屋グリーンズから西北の山道を巡るコース。標高が高く空気が澄んでいるため、夏でも涼しく歩けます。山道は季節や天候によって状況が変わるので、装備と足元には十分な備えを。
つくばみらい 桜の季節ルート
「黒羽城」の舞台となったワープステーション江戸は現在一般公開されていませんが、同じつくばみらい市内の福岡堰さくら公園は自由に訪れることができます。唯之助と若君がデートした桜並木は、春には見事な景観に。桜の季節に合わせて訪れるのが断然おすすめです。
評価・反響
評価スコア
視聴率は第1回7.4%、その後は5〜7%台で推移しました。数字自体は大きくないものの、放送終了後にじわじわとファンを増やし、続編スペシャルの制作、そして2021年の「タイムスリップ作品で好きなドラマランキング」1位という結果につながっています。口コミが評価を押し上げた、典型的な「後から効いてくる」作品です。