作品紹介
「ヒトリシズカ」は、誉田哲也による同名の連作短編小説を原作とした、WOWOWの「連続ドラマW」枠で2012年10月から11月にかけて放送された全6話のサスペンスドラマである。監督は平山秀幸、脚本は青島武が手がけた。主演の夏帆が演じる謎の少女・伊東静加を軸に、5つの殺人事件が絡み合いながら、やがてひとりの少女の壮絶な過去と真実が明らかになっていく。
各話は「闇一重」「蛍蜘蛛」「腐屍蝶」「死舞盃」「罪時雨」「独静加」と題され、それぞれ異なる主人公の視点から物語が進行するオムニバス的構成を取りながらも、最終話で全てがひとつに収束するという緻密な脚本が特徴。岸部一徳、高橋一生、黒沢あすか、村上淳ら実力派俳優が脇を固め、重厚な人間ドラマを描き出した。第39回放送文化基金賞テレビドラマ番組賞を受賞した秀作である。
話題になったポイント
夏帆の圧倒的な存在感
主演の夏帆が演じた伊東静加は、セリフが極端に少なく、佇まいと表情だけで物語を牽引する難役であった。その静謐でありながら底知れぬ恐怖を感じさせる演技は、視聴者から「夏帆の空気感が素晴らしい」と高く評価された。清純派のイメージが強かった夏帆が、ダークで複雑なキャラクターを見事に演じきったことで、女優としての転機となった作品でもある。
オムニバスでありながら収束する構成
各話ごとに主人公が変わり、一見独立した事件を描いているように見えて、実は全てが伊東静加という一人の少女に繋がっていくという構成は、原作の持ち味を見事に映像化したものである。視聴者からは「飽きずに観られた」「二日で完走するほど引き込まれた」との声が多く、ミステリーとしての完成度の高さが評価された。
放送文化基金賞受賞の実力
本作は第39回放送文化基金賞テレビドラマ番組賞を受賞している。WOWOWならではの地上波では描ききれない重厚でシリアスなテーマに正面から取り組んだ姿勢、そして平山秀幸監督の映画的な演出が審査員から高く評価された。派手さはないが、丁寧に作り込まれた映像美と演技の質で魅せる正統派のドラマ作品として、ドラマファンの間で根強い人気を誇る。
ロケ地ガイド
東京都・多摩西部エリア(第1話「闇一重」)
第1話の舞台となった国分寺・あきる野・日の出町周辺。住宅街や自然豊かな多摩西部の風景が、事件の日常に潜む不穏さを巧みに演出している。
- アパート(サンハイツ恋ヶ窪):吉井淳也が小池基文を拳銃で撃った事件現場。日の出町の静かなアパートが緊迫の第1話冒頭シーンに使われた
- マエダオート富士吉田スタジオ:国分寺警察署の特別捜査本部として撮影された。山梨県富士吉田市に実在するスタジオである
- あきる野ルピア:木崎信吾と平田が聞き込みをしていたデパート入口のシーンで登場
- 秋留野広場:木崎信吾と平田がハンバーガーを食べていた場所。あきる野市秋川駅前の広場である
- 平井川の観音橋:拳銃捜索のために川さらいが行われていた印象的なシーンの撮影場所
東京都・世田谷エリア
世田谷区奥沢を中心としたエリアは、花淵美歩の生活圏として多くのシーンが撮影された。落ち着いた住宅街の雰囲気がドラマの世界観にマッチしている。
- 三越新宿店:花淵美歩が働く靴売場のあるデパートとして撮影された
- マンション(世田谷区奥沢):花淵美歩が住むマンションの外観として使用された
- 大丸屋酒店:桑原圭太の酒屋「店木屋酒店」として登場。世田谷区奥沢の実在する酒店である
- 恵泉園芸センター奥沢ガーデン:和泉田知也子の花屋のシーンで使用された
- 呑川緑道:ドラマ中で繰り返し登場する川沿いの道。世田谷区深沢の緑豊かな遊歩道
- 井の頭公園:花淵美歩が小川千勝とデートした公園のシーン
埼玉県・大宮エリア(第2話「蛍蜘蛛」)
第2話の主人公・山岸潤哉が活動する大宮の繁華街。さいたま市大宮区仲町の歓楽街が、風俗店取り締まりに奔走する山岸の姿を映し出す。
- 大宮仲町の道路:山岸潤哉が手帳の地図を黒く塗ったり、ピンクチラシを剥がしたりしていた大宮の繁華街
- コスモスみながわ:第2話で登場する江戸川区松本の施設
- 味の素スタジアム:山岸潤哉が伊東静加に呼ばれて行った公園として使用された
東京都・銀座エリア(第3話「腐屍蝶」)
第3話の主人公である私立探偵・青木久則の活動拠点。銀座の歴史あるビルや料亭が、探偵ドラマの雰囲気を醸し出している。
- 奥野ビル(旧銀座アパートメント):青木探偵事務所が入居しているビルとして撮影された。1932年竣工の歴史的建造物
- 花蝶:南原義男と木村竜二が車から降りた料亭。銀座7丁目の高級料亭である
- シャローム湯島:CLUB CODAが入居しているビルとして使用された
- 東京薬科大学:関東医科大学として登場。八王子市の広大なキャンパスが使われた
神奈川県(第4話「死舞盃」)
第4話では神奈川県横須賀市の病院が重要なシーンの舞台となった。
- 横須賀市立市民病院:柿本達矢が入院している警察病院として撮影された
- マンション(横浜市青葉区):南原義男を乗せた車が入っていったマンション
石川県・金沢エリア
金沢の風情ある街並みが、ドラマに独特の情緒を加えている。兼六園周辺から長町武家屋敷跡まで、金沢の名所が数多く登場する。
- 小松空港:金沢への玄関口として飛行機で到着するシーン
- 金沢城石川門:金沢の象徴として登場。石川橋を通過するシーンで使用された
- 犀川の犀川大橋:特徴的な水色の鉄橋が印象的なシーン
- 料亭つば甚:雄大の伯父のお菓子屋として撮影された。寺町の歴史ある料亭
- 浅野川沿いの道:雄大が通学に使っていた道。浅野川の美しい風景が広がる
- 主計町:雄大の通学路として登場した金沢の情緒ある茶屋街
- 長町武家屋敷跡:同じく通学路のシーンで登場した金沢を代表する観光名所
茨城県・最終章の舞台(第5話「罪時雨」)
伊東静加の過去が明らかになる重要なシーンの撮影地。茨城の海岸が物語のクライマックスに深い余韻を残す。
- 藤太軒:伊東孝俊が伊東深雪に初めて会った前田理髪店として使用された
- アパート(常総市):伊東深雪と幼少の伊東静加が住んでいたコーポ朝日奈
- 高戸小浜海岸:伊東深雪が伊東孝俊に静加の本当の父親について話した海岸。茨城県高萩市にある美しい海岸で、物語の核心に迫る重要なシーンが撮影された
聖地巡礼のおすすめルート
金沢ロケ地巡りコース(半日)
小松空港から金沢市内へ移動し、金沢城石川門からスタート。兼六園周辺を散策した後、浅野川沿いの道を歩いて主計町の茶屋街へ。ひがし茶屋街も近く、併せて楽しめる。その後、犀川大橋を渡って長町武家屋敷跡へ。寺町の料亭つば甚の前を通って金沢の歴史ある街並みを堪能できる。金沢は徒歩とバスで効率よく回れるコンパクトな街なので、ドラマの雰囲気に浸りながらの散策に最適である。
東京・世田谷〜あきる野コース(1日)
午前中は世田谷区奥沢エリアからスタート。大丸屋酒店や恵泉園芸センター、呑川緑道を巡り、花淵美歩の生活圏を体感する。午後はJR五日市線であきる野方面へ移動し、あきる野ルピアや秋留野広場など第1話のロケ地を巡る。時間があれば井の頭公園にも立ち寄りたい。ドラマの世界観に浸りつつ、東京の多様な表情を楽しめるルートである。
銀座・湯島レトロ建築コース(半日)
銀座1丁目の奥野ビル(旧銀座アパートメント)は1932年竣工の歴史的建造物で、アートギャラリーとしても人気のスポット。ここから銀座7丁目の料亭・花蝶の前を通り、地下鉄で湯島へ移動してシャローム湯島を訪れる。昭和の面影を残すレトロな建築群を巡る、建築ファンにもおすすめのコースである。
視聴者の声・評判
評価スコア
映画・ドラマレビューサイトFilmarksでは5.0点満点中3.6点を獲得し、約994件のレビューが投稿されている。評価分布は3.1〜4.0点が全体の64%を占め、安定した評価を得ている。地上波のドラマに比べて派手さはないものの、WOWOWドラマらしい質の高さが認められた作品である。
好評だったポイント
最も多く寄せられた好評コメントは、夏帆の演技力に関するもので「空気感が素晴らしい」「佇まいだけで恐怖を感じさせる」といった声が目立った。また、オムニバス形式でありながら最終話で全てが繋がる構成に対して「飽きずに観られた」「二日で完走するほど引き込まれた」と、没入感を評価する声も多い。一方で「全体的に暗くシリアス」「心理的に重い」といった意見もあり、万人向けではないが、ミステリー好きには強くおすすめできる良作という評価が大勢を占めている。