作品紹介
『先輩と彼女』は、南波あつこによる講談社『別冊フレンド』連載の同名人気コミックを原作とした2015年10月17日公開の青春恋愛映画です。監督は『東南角部屋二階の女』で注目された池田千尋が務め、主人公・都築りかを当時ブレイク中だった芳根京子、憧れの先輩・美野原圭吾を『烈車戦隊トッキュウジャー』の志尊淳が演じました。脇を固めるのは小島梨里杏、戸塚純貴、水谷果穂など、同世代の実力派若手キャストです。
物語の舞台は高校。甘い初恋を夢見る1年生の都築りかは、現代文化調査研究部の部長を務める3年生・美野原圭吾にひと目惚れしてしまいます。しかし圭吾の心にはすでに卒業生の沖田葵がおり、りかは初めての片想いで嫉妬や切なさ、諦めといった大人の一歩手前の感情を次々と経験していくことに。圭吾もまた、まっすぐなりかの存在に少しずつ心を揺らされていきます。
撮影は2015年2月から春先にかけて、都内と愛媛県を中心に行われました。愛媛では松山市街だけでなく、野忽那島や今治市・新居浜市・大三島など瀬戸内各地で長期ロケが敢行され、みかん畑や漁港、産業遺産といった土地の風景が物語に豊かな色を添えています。少女漫画原作らしい甘酸っぱさと、地方の光景が織りなす静けさが同居した一本です。
話題になったポイント
志尊淳と芳根京子の初タッグ
『烈車戦隊トッキュウジャー』で子ども人気を獲得した志尊淳と、朝ドラ『花子とアン』で注目を浴びた芳根京子という、2015年当時もっとも勢いのあった若手ふたりの初共演作として大きな話題になりました。透明感のあるふたりの空気感が作品のトーンそのものを作っており、公開当時から「ビジュアルだけで尊い」と熱い支持を集めました。
「片想いのリアル」が刺さる描写
「自分が好きになった人には、すでに好きな人がいる」という少女漫画でも屈指に切ない設定を丁寧にすくい取っているのが本作の大きな魅力です。嫉妬で胸が焦げるようなシーン、勇気を出して踏み込めない沈黙のシーンなど、10代特有の繊細な心の揺れを芳根京子が瑞々しく演じ、Filmarksのレビューでは「自分の初恋を思い出して泣いた」という声が数多く並んでいます。
愛媛オールロケに近い豊かな映像美
池田千尋監督はドキュメンタリー的な視点も持ち合わせる作家で、本作でも瀬戸内の海、みかん畑、島の細い路地、近代化産業遺産の煉瓦群といった情景を物語の心情とリンクさせて切り取っています。東京が舞台の原作を愛媛の風景を主軸にして再構成した映像設計は、地方ロケ恋愛映画のお手本としても語られています。
ロケ地ガイド
愛媛県松山市・野忽那島エリア
本作のロケの中心となったのが松山市と、その沖合に浮かぶ忽那諸島のひとつ・野忽那島です。高浜港からフェリーで約40分の小さな島が、作中の静かな舞台として印象的に登場します。
- 野忽那港:島の玄関口としてキャラクターたちが降り立つ場面の舞台。瀬戸内らしい穏やかな海と防波堤の風景が印象的です。
- 野忽那漁港:漁船が並ぶ生活感のあるシーンで登場。漁村ならではの時間の流れを感じさせます。
- 大三島ふるさと憩いの家:宿泊施設として登場し、物語の合宿・滞在シーンを支える重要ロケ地。
- 皿山:島を見下ろす高台の風景として使われ、心情を重ねるシーンに映えます。
- みかん農家:瀬戸内らしいみかん畑のシーンで登場。愛媛らしい色彩が画面を彩ります。
- おなか食堂:地元の食堂として登場するアットホームな空間。
- 美容院リラ:島の生活感を伝える街並みのアクセントとして登場。
- 二神島の路地:忽那諸島の細い路地を歩くシーンで使用。昭和の空気を残す島の路地そのものが画になります。
- 二子島:瀬戸内の島影として印象的に映り込むロケ地。
松山市内・伊予鉄道沿線エリア
島のシーンと対になるように、松山市街の生活風景や駅・温泉などが繰り返し登場します。観光で訪れても回りやすい、聖地巡礼の定番コースです。
- 高浜港:野忽那島へ渡る発着点。海風と伊予鉄の駅が隣接する情緒ある港です。
- 伊予鉄道高浜線高浜駅:港と一体化したレトロな終着駅で、『千と千尋の神隠し』のモデル説でも知られるフォトジェニックな場所。
- 三津浜港:松山の古い港町の風情を伝える舞台として使用。
- 道後温泉:愛媛を代表する名湯。本館の堂々たる姿がスクリーンに映えます。
- 愛媛県庁:松山のランドマークとして登場する歴史的建築。
- 料亭 吉:地元の老舗として作中に登場し、和の空気を添えます。
- 内子座:大正時代建築の木造芝居小屋。静かな情感あふれる場面の舞台として欠かせません。
今治・新居浜・しまなみエリア
瀬戸内海の絶景と、近代化産業遺産が織りなす独特の世界観を生かしたのが東予エリアのロケ地群です。映画後半の印象的なシーンの多くがここで撮影されました。
- 糸山公園:来島海峡大橋を一望できる今治の名所。
- 亀老山展望台:大島の山頂にあり、多島美を一望できる絶景スポット。心情を投影する俯瞰ショットに最適。
- 大山祇神社:大三島の総鎮守で、全国山祇神社の総本社。神聖な雰囲気が物語を引き締めます。
- 住友金属鉱山東予工場:工業地帯の巨大な風景として登場。
- 星越住宅:新居浜の歴史ある社宅街。昭和の空気がそのまま残る貴重なロケ地。
- 広瀬公園レンガ塀:別子銅山ゆかりのレンガ塀が情緒を添えます。
- 小女郎川の鹿森ダム:山間の静寂が漂うダム湖のシーンで使用。
- 旧端出場水力発電所:重厚なレンガ造りの産業遺産で、印象的な場面の舞台に。
- 別子東平貯鋼庫跡:「東洋のマチュピチュ」と呼ばれる産業遺産。物語に厳かな空気を添えます。
- 赤煉瓦倉庫:東予の港町らしい煉瓦建築が登場。
- 愛媛蚕種株式会社:大正建築の歴史的建造物が作品に奥行きを与えます。
- 塩釜神社:地元に根ざした小社として登場。
- 宇佐八幡神社:石段や境内が物語の舞台として使われています。
- 山根公園:煙突のモニュメントが残る新居浜のシンボル的公園。
東京・神奈川エリア
学校生活や日常パートは、東京と神奈川の郊外で撮影されています。都会的というより、落ち着いた住宅街の空気が選ばれているのが印象的です。
- 桜美林大学 町田キャンパス:学園シーンのメイン舞台。緑豊かなキャンパスが物語の背景になっています。
- 洗足池:大田区の水辺。登場人物たちの心情を映し出す静かなロケ地。
- 雪ヶ谷八幡神社:大田区の古社で、重要な会話シーンの舞台に。
- 鶴見川の土手:広い空と川原が印象的な青春シーンで登場。
- 新百合ヶ丘駅ペデストリアンデッキ:日常の通学シーンに使われた都市空間。
- ともえ鮨:神奈川の飲食店シーンで登場。
- 静岡県埋蔵文化財センター:施設外観や一部シーンの撮影に使用。
聖地巡礼のおすすめルート
1泊2日・松山+野忽那島プラン
初日は松山入りし、道後温泉本館・愛媛県庁・内子座など市街地の作品ゆかりスポットを路面電車で巡ります。夕方に松山市駅から伊予鉄道高浜線で高浜駅・高浜港まで移動して瀬戸内の夕景を楽しみ、道後温泉に宿泊。2日目は朝一の中島汽船で野忽那島へ渡り、野忽那港・皿山・おなか食堂・みかん畑などを徒歩で巡ります。所要は2日間で、コンパクトながら作品の「海側」の世界観をしっかり体感できる黄金コースです。
東予・しまなみ産業遺産ルート
車利用なら新居浜を拠点に、山根公園・広瀬公園レンガ塀・星越住宅などレンガ街を歩いた後、マイントピア別子経由で東平(旧端出場水力発電所・別子東平貯鋼庫跡)へ。「東洋のマチュピチュ」の幻想的な景観で作品のエモーショナルな場面を追体験できます。翌日はしまなみ海道経由で大山祇神社・亀老山展望台・糸山公園を巡れば、瀬戸内海の多島美と神聖な雰囲気を一度に味わえる2日コースに。所要は2日で、ドライブ派に特におすすめです。
東京日帰り・学園パート巡礼ルート
小田急線新百合ヶ丘駅のペデストリアンデッキからスタートし、桜美林大学町田キャンパスで学園シーンの空気を堪能。午後は東急池上線沿線に移動し、雪ヶ谷八幡神社・洗足池を散策すれば3〜4時間で作品の「日常」パートを一気に回れます。半日あれば十分なお手軽ルートで、愛媛行きの前後に組み合わせるのもおすすめです。
視聴者の声・評判
評価スコア
Filmarksでは6000件超のレビューで平均★3前後と、少女漫画実写映画の中では穏やかな支持を得ているポジションです。映画.comやYahoo!映画でも「原作ファン向けの甘さ」と「映像の美しさ」を評価する声が中心で、大ヒット作というより「静かに愛され続けている青春映画」として定着しています。
好評だったポイント
特に高く評価されているのは、主演ふたりのナチュラルな芝居と、愛媛ロケの映像美です。「芳根京子のりかがいじらしくて泣ける」「志尊淳が完璧な先輩で眼福」といったキャスト評が多く、加えて「瀬戸内の景色が美しすぎて旅に出たくなった」「ラストの海辺のシーンが忘れられない」といったロケ地への言及も目立ちます。派手さはないものの、初恋のもどかしさを静かな画で綴った作りは、大人になってから見返して沁みるタイプの一本として支持されています。