作品紹介
『ミッドナイトスワン』は2020年9月25日公開の日本映画。監督・脚本は内田英治で、企画の立ち上げから原作小説の執筆まで自ら手がけたオリジナル作品です。第44回日本アカデミー賞で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞(草彅剛)を含む複数部門を受賞し、2024年6月まで日本国内で185週というロングラン上映を記録しました。
男性として生まれながら女性として生きるトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)は、東京・新宿でショーパブに勤めながらひっそりと暮らしています。そんな凪沙のもとに、母親から虐待を受けていた親戚の中学生・桜田一果(服部樹咲)が預けられます。ぎこちない共同生活のなか、一果がバレエに並外れた才能を持つことを知った凪沙は、彼女の夢を支えることに自らの生きる意味を見出していきます。血のつながらない二人が、やがて「母と娘」に近づいていく――。
一果を演じた服部樹咲はバレエ経験者で、本作が初演技。撮影は埼玉(さいたま市大宮区、深谷市、熊谷市)、東京(新宿区、中野区、渋谷区)、神奈川(横浜市中区・南区)を中心に行われ、終盤には静岡県下田市の舞磯浜、そして新型コロナウイルスの影響でニューヨーク渡航が中止となった代替地として豊橋市公会堂が使われました。街の猥雑さと、バレエの静謐さ。その落差が全編を通じて画面に刻まれています。
話題になったポイント
草彅剛の代表作となった演技
凪沙役の草彅剛は、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ国内映画賞を席巻。声のトーン、歩き方、指先の動きに至るまで役に沈み込んだ演技は、公開後も長く語り継がれています。
服部樹咲の鮮烈なデビュー
一果役に抜擢された服部樹咲は、演技経験のないバレエダンサー。実際に踊れる俳優を起用したことで、石井不二香バレエスタジオでのレッスンシーンやコンクールの舞台が吹き替えなしで成立しました。日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。
185週のロングラン上映
公開規模は決して大きくなかったにもかかわらず、口コミで広がり続け、日本国内で185週というロングラン上映を達成。ウディネ・ファーイースト映画祭では観客賞(ゴールデン・マルベリー賞)を受賞するなど、海外でも評価されました。
ロケ地ガイド
新宿・渋谷・中野エリア(東京)
凪沙と一果の東京での日常が描かれるエリア。
- JR新宿駅東口駅前広場:東京都新宿区。凪沙と一果が最初に待ち合わせた場所。物語のすべてが始まる階段前です。
- 中野新仲見世商店街 和喜田:東京都中野区中野5丁目。自宅へ向かう道中で二人が立ち止まる場面。
- 石井不二香バレエスタジオ:東京都渋谷区東3丁目。一果が通うバレエスクール。作品の心臓部となる空間です。
- 神泉児童遊園地:東京都渋谷区神泉町。一果が夜間にひとりバレエを練習する公園。渋谷の喧騒のすぐ裏にある小さな遊び場です。
さいたま・熊谷エリア(埼玉)
凪沙が働くショーパブ周辺と、一果の母の生活圏。
- ステージクラブ トレビアン!大宮:埼玉県さいたま市大宮区仲町。凪沙が働くニューハーフ・ショーパブ。実在のショーパブが使われました。
- 大宮南銀座商店街 とり徹:埼玉県さいたま市大宮区仲町。具合の悪い凪沙が帰宅する路地。大宮の歓楽街「南銀」の空気がそのまま映ります。
- CLUB CUTE:埼玉県熊谷市弥生。一果の母・早織が働くキャバクラ。
深谷エリア(埼玉)
一果の学校生活とバレエの舞台。
- 東京成徳大学深谷中学校・高等学校:埼玉県深谷市宿根。一果が通う中学校。
- 花園文化会館アドニス:埼玉県深谷市小前田。バレエのコンクール会場。
- 皆成病院:埼玉県深谷市西島町。りんが診断を受ける病院のロビー。
横浜エリア(神奈川)
凪沙の住まいと、終盤の重い選択が描かれる街。
- 大和ビル:神奈川県横浜市南区宿町。凪沙が暮らすアパートの外観。
- 吉田町第一名店ビル裏の路地:神奈川県横浜市中区吉田町。通院帰りの凪沙が親子連れとすれ違う場面。
- 北原ビル:神奈川県横浜市中区福富町西通。凪沙が働くことを決めた店が入るビル。
- ヨコハマホステルヴィレッジ林会館:神奈川県横浜市中区松影町。店の廊下のシーン。
下田・豊橋エリア
物語の余白と、頂点を担った遠方ロケ地。
- 舞磯浜:静岡県下田市吉佐美。凪沙と一果が二人で訪れる海岸。伊豆・下田の入り江で、本作でもっとも静かな時間が流れる場所です。
- 豊橋市公会堂:愛知県豊橋市八町通。ニューヨークの劇場として撮影されたコンクール会場。1931年竣工のロマネスク様式で、国の登録有形文化財です。
聖地巡礼のおすすめルート
渋谷・新宿バレエルート
JR新宿駅東口駅前広場から出発し、中野新仲見世商店街 和喜田を経て、渋谷の石井不二香バレエスタジオと神泉児童遊園地へ。電車移動を挟んで半日で回れる、一果の東京を辿るコースです。
大宮・深谷ロケ地ルート
ステージクラブ トレビアン!大宮と大宮南銀座商店街 とり徹のある大宮南銀エリアから、高崎線で深谷へ。東京成徳大学深谷中学校・高等学校と花園文化会館アドニスを巡る、埼玉縦断コース。深谷は渋沢栄一の生地でもあり観光と組み合わせやすい土地です。
下田・海のラストシーンルート
伊豆急下田駅からバスで舞磯浜へ。凪沙と一果が並んで座った海辺を訪ねる、日帰りの小旅行コース。すぐ隣には多々戸浜・入田浜といった名ビーチも続きます。
視聴者の声・評判
評価スコア
Filmarksの平均スコアは★4.1と高水準。日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞という結果に加え、185週のロングラン上映という数字が、この作品が観客に長く支持され続けたことを物語っています。
好評だったポイント
「草彅剛の演技が凄まじい」「服部樹咲のバレエが本物」「終盤の展開が苦しくて忘れられない」「新宿と横浜の街の質感がすごい」「疑似親子の関係の描き方が繊細」「渋谷慶一郎の音楽が作品を支えている」――安易な救済を用意せず、社会の周縁に立つ人間の尊厳を正面から描いた作品として、日本映画の重要作に数えられています。