作品紹介
『主に泣いてます』は、東村アキコによる同名漫画を原作に、2012年7月から9月までフジテレビ系「土ドラ」枠で放送された全10話の連続ドラマです。絶世の美貌ゆえに周囲の男性の人生を狂わせ、自身も幸せになれない薄幸のモデル・紺野泉を主人公に据えたシュールなラブコメディで、泉は美しさを隠すために「子泣きじじい」のお面を被って街を歩くという独特の設定が大きな話題を呼びました。菜々緒がこの作品で連続ドラマ初出演にして初主演を務め、相手役の純朴な美大生・赤松啓介をKAT-TUNの中丸雄一が演じています。
物語は、有名画家・青山仁のモデル兼愛人として生きる泉が、仁の代講として絵画教室の講師を引き受けた赤松と出会うところから動き出します。「ただ好きな人のそばにいたい」という切ない願いを抱く泉と、彼女に振り回されながらも惹かれていく赤松、そして青山仁や教室の個性的な生徒たちが織りなす片思いの連鎖が、ギャグとペーソスを織り交ぜながら温かく描かれていきます。草刈麻有、加藤諒、安達祐実、風間トオルら脇を固めるキャストの怪演も見どころです。
舞台は東京都墨田区の向島・京島エリア。昔ながらの下町風景を活かした撮影が行われ、原作の空気感を大切にした映像作りが特徴です。深夜枠らしいテンポの良さと、昭和テイストのベタなギャグ、切ない片思いドラマの緩急が絶妙で、放送から年月が経った今もロケ地巡礼の対象として愛され続ける一作となっています。
話題になったポイント
菜々緒の連ドラ初主演と「子泣きじじい」の衝撃ビジュアル
モデルとして注目を集めていた菜々緒にとって、本作は連続ドラマ初出演かつ初主演という記念碑的な作品です。長身・美貌の泉が、その美しさを隠すために子泣きじじいのお面を被って街中を歩くビジュアルは強烈で、放送当時から大きな話題を呼びました。シリアスとコントを行き来する振り幅の大きな演技で、その後の女優路線を決定づけた一本と評価されています。
東村アキコ原作ならではのハイテンションなギャグ
原作は『海月姫』『かくかくしかじか』などで知られる東村アキコの人気作で、昭和~平成のベタなギャグや楽屋オチを連発するハイテンションなノリが持ち味です。ドラマ版もそのテイストを忠実に再現し、土曜深夜らしい自由度の高い演出で、小ネタと泣ける片思いドラマを同時に味わえる稀有な作風となっています。草刈麻有演じる美大生・ジュリの演技も高く評価されました。
下町・向島をまるごと切り取った映像美
舞台となる墨田区向島・京島エリアの長屋、路地、商店街、隅田川の橋々が、物語の情緒を支える重要な要素として丁寧に切り取られています。派手な都心の絵作りではなく、桜橋・吾妻橋・キラキラ橘商店街といった下町の日常風景をメインに据えることで、泉と赤松の不器用な恋模様が一層引き立ち、視聴者の「歩いてみたい」気持ちを強く誘う仕上がりになっています。
ロケ地ガイド
墨田区 向島・京島エリア(下町の中心舞台)
本作の中心舞台となったのが、墨田区の向島・京島エリアです。隅田川沿いの橋、昔ながらの商店街、入り組んだ路地など、下町の魅力をそのまま映し込んだカットが随所に登場します。
- 隅田川の桜橋:赤松がアトリエへ向かう道すがらに繰り返し登場する、隅田川唯一の歩行者専用橋。上から見るとX字型になっている印象的な造形で、主人公たちの移動シーンを象徴します。
- 桜橋通り:泉が大切な絵葉書を落とすシーンや、夜に駆け抜けるシーンなどで繰り返し映る通り。作中のキーとなる通りの一つです。
- 桜橋前の隅田公園:桜橋のたもとに広がる隅田公園で、登場人物たちの会話やすれ違いの舞台になります。
- 隅田公園:ベンチや川沿いの遊歩道が、泉たちの心情を映す背景として活用されています。
- 隅田川の吾妻橋:スカイツリーを望む吾妻橋は、向島の象徴的な景色としてアイキャッチ的に登場します。
- 隅田川の堤防:川沿いを歩く何気ないシーンで登場する堤防。下町らしい空気感を伝える重要なロケーションです。
- キラキラ橘商店街:京島の昔ながらのアーケード商店街。地元の人々との交流シーンに使われ、本作を代表するロケ地の一つです。
- 京島南公園:住宅街に溶け込む小さな公園で、日常的なシーンの背景として登場します。
- 北十間川の源森橋:スカイツリーを背景に望む撮影名所で、移動シーンに趣を加えています。
- 喫茶フローラ:向島らしい佇まいの純喫茶。登場人物の待ち合わせや会話劇の舞台になります。
東京都内 その他エリア
向島以外にも、都内各所の個性ある場所が作品を彩っています。アート、美術、下町の生活感の異なる顔を堪能できます。
- アノニマ・スタジオ:台東区蔵前にある書籍・イベントスペースで、アトリエや絵画教室の関連シーンなど、作品世界の「美」を象徴する空間として登場します。
- 東京海洋大学品川キャンパス:赤松ら美大生たちの学生シーンに使われ、広々としたキャンパスの雰囲気が物語に溶け込みます。
- 東京富士美術館:青山仁の美術世界を象徴するシーンで登場し、格調高い絵画モチーフを支えます。
- ラ・ヴィータ(自由が丘のベニス):運河を模したロマンチックな一画で、物語のムードを盛り上げる撮影スポットになっています。
- エポカザショップ丸の内店:モデルとしての泉の華やかな一面を切り取るショッピングシーンで使用されています。
- 第一ホテル東京シーフォート:天王洲アイルのシティホテルで、少し改まった場面のロケ地に選ばれています。
- 鳳明館本館:文京区本郷の登録有形文化財の老舗旅館。レトロな木造建築が印象的なシーンを生み出しています。
- セント・マリー・チャーチ:華やかなチャペルが、本作の結婚式関連シーンを象徴します。
- 下高井戸八幡神社:静かな境内が、登場人物の内省や再会のシーンを演出しています。
千葉県 銚子・房総エリア(海の非日常)
物語の転機や心情を描く場面では、東京を離れて千葉の海沿いエリアでロケが行われています。雄大な海岸線が、都心の喧騒とは違う非日常感をもたらします。
- 犬吠埼:銚子市の突端に位置する日本有数の景勝地で、白亜の灯台と荒々しい太平洋の景色が、物語の転機となるシーンに深い余韻を与えます。
- 屏風ヶ浦:「東洋のドーバー」と称される約10kmの海食崖で、登場人物たちの心象風景を映す壮大なロケーション。
- 君ヶ浜:犬吠埼に隣接する美しい砂浜で、潮風を感じる印象的なシーンに使用されています。
- 海鮮料理かなや:銚子ならではの海の幸を味わえる食事処。旅先のシーンに土地の空気を添えます。
- 別邸 海と森:房総の自然に抱かれた宿泊施設で、物語の穏やかな時間を描く舞台として登場します。
聖地巡礼のおすすめルート
向島・京島下町ぐるっと半日ルート
東武スカイツリーライン「とうきょうスカイツリー駅」または「曳舟駅」を起点に、まずは北十間川の源森橋でスカイツリーを背景に一枚。そこから隅田川の吾妻橋へ抜け、川沿いを北上して隅田公園、隅田川の桜橋、桜橋前の隅田公園、桜橋通りと、赤松が通う道を追体験します。その後、内陸側へ入りキラキラ橘商店街で下町グルメを楽しみながら、京島南公園や喫茶フローラを巡ると、徒歩と軽い散歩で3〜4時間程度のちょうどよい半日コースになります。
銚子・犬吠埼 海辺の1日ルート
東京駅から特急しおさいで銚子駅へ向かい、銚子電鉄に乗り換えて犬吠駅へ。まず犬吠埼の灯台と太平洋の絶景を堪能し、隣接する君ヶ浜の砂浜を散策。昼は海鮮料理かなやで銚子の海の幸を味わい、午後は少し足を延ばして屏風ヶ浦の海食崖で雄大な景観を体感します。時間があれば別邸 海と森での宿泊を組み合わせると、作品の非日常パートをゆったり追体験できるおすすめの1泊2日プランになります。
視聴者の声・評判
評価スコア
ドラマレビューサイト「Filmarks」では平均★3.5前後、レビュー件数は800件以上と、深夜ドラマとしては安定した支持を集めています。テレビ王国やザテレビジョンなどのクチコミでも、菜々緒の初主演を称える声や、原作ファンからの「東村アキコ節を再現できている」という評価が目立ち、放送当時から現在まで、じわじわと再評価が続いているタイプの作品です。
好評だったポイント
特に評価されているのは、菜々緒の振り切った演技と、草刈麻有演じる美大生ジュリの達者な芝居、そして加藤諒・安達祐実・風間トオルら脇役陣の怪演です。ギャグの切れ味と切ない片思いの描写が同居する独特のバランス、ベタな笑いで泣かせる東村アキコ流のストーリーテリング、そして向島・京島の下町風景や隅田川沿いの美しい画づくりは「舞台挨拶のように街が主役」と評する声も多く、ロケ地巡礼に出かけたくなる力を持った作品として今も愛されています。