作品紹介
『大河の一滴』は2001年9月1日公開の日本映画。作家・五木寛之の同名エッセイ(200万部を超える大ロングセラー)をモチーフに、五木自身が原案を執筆し、脚本を巨匠・新藤兼人、監督を『月光の夏』『ハチ公物語』の神山征二郎が担当した感動大作です。配給は東宝、上映時間113分。ニューヨークで行われたワールドプレミアでも絶賛されました。
故郷・金沢を離れ東京で働くOLの小椋雪子(安田成美)は、ロシア旅行で知り合った青年トランペッター・ニコライ(セルゲイ・ナカリャコフ)が、オーディションを受けに来日することを知ります。雪子は彼のために力を尽くしますが、ニコライはあえなく落選。そんな折、雪子の父・伸一郎(三國連太郎)が末期ガンであると宣告されます。生と死、家族、そして人が生きることの意味――五木寛之が説いた「大河の一滴」という思想が、金沢の風景とともに静かに描かれていきます。共演は渡部篤郎(榎本昌治)、倍賞美津子(小椋麻梨江)、南野陽子(川村亜美)。
ロケ地は北陸三県に広がります。中心となるのは金沢で、近江町市場、浅野川の天神橋、浅野川常磐橋下流の友禅流しなど、加賀百万石の城下町の情緒が全編を包みます。さらに福井の東尋坊、富山の旧小杉郵便局と、北陸の風景が物語の背骨を成しています。
話題になったポイント
200万部超のベストセラー随筆の映画化
原作の『大河の一滴』は、五木寛之が「人はみな大河の一滴にすぎない」という思想を綴ったエッセイで、幅広い年齢層から圧倒的な支持を受けた大ロングセラー。物語ではないエッセイを、五木自身が原案として書き下ろした劇映画として成立させた点が本作の特異な出発点です。
新藤兼人脚本×神山征二郎監督×三國連太郎
脚本は当時89歳の新藤兼人。監督は社会派の神山征二郎。そして末期ガンを宣告される父を演じたのは三國連太郎という、日本映画の重鎮が揃った布陣です。死を前にした父と娘の対話は、本作の中核となる場面です。
金沢の四季と友禅流し
加賀友禅の反物を川で洗い流す「友禅流し」を浅野川常磐橋下流で撮影するなど、金沢ならではの風物詩が丁寧に切り取られています。「大河の一滴」というタイトルと、川を軸にした映像設計が呼応する構成です。
ロケ地ガイド
金沢・浅野川エリア
「川」がモチーフとなる本作の、映像的な核。
- 浅野川の天神橋:石川県金沢市材木町。小椋雪子が榎本昌治と父について話をしていた場所。浅野川に架かる歴史ある橋です。
- 浅野川常磐橋下流:石川県金沢市材木町。友禅流しをしていた川。加賀友禅の伝統を伝える金沢の風物詩です。
- 民家:石川県金沢市材木町。榎本昌治の住む家。
- 浅野川病院:石川県金沢市小坂町。小椋伸一郎が入院した病院。
金沢・市街地エリア
雪子の故郷の日常が描かれる、金沢の中心部。
- 近江町市場:石川県金沢市上近江町、下近江町、青草町。病院を出た3人が歩いていた場所。「金沢市民の台所」として300年近い歴史を持つ市場です。
- 金沢中央郵便局:石川県金沢市三社。榎本昌治が勤めていた郵便局。
- 久助前の道路:石川県金沢市片町1丁目。小椋雪子と榎本昌治が歩いていた町。金沢随一の繁華街・片町です。
- 中央小学校横の鞍月用水:石川県金沢市長町1丁目。病院へ向かうタクシーが走っていた用水沿いの道。武家屋敷跡・長町エリアを流れる用水です。
- 金沢市東斎場:石川県金沢市鳴和台。小椋伸一郎の斎場。
石川・海と学校エリア
- 内灘海岸:石川県河北郡内灘町向粟崎チ。自殺した川村亜美の遺書を持って小椋雪子が訪れた海。日本海の荒々しい波が押し寄せる砂丘の海岸です。
- 根上町立根上中学校:石川県能美市浜町。榎本昌治がブラスバンドの指揮をしていた場所。
富山・福井エリア
- 旧小杉郵便局:富山県射水市戸破。小椋雪子の住む郵便局。1902年建築の擬洋風建築で、国の登録有形文化財です。
- 三国温泉 望洋楼:福井県坂井市三国町米ケ脇4丁目。小椋伸一郎と雪子とニコライが出かけた温泉宿。日本海を望む老舗旅館です。
- 東尋坊:福井県坂井市三国町。3人が出かけた断崖。柱状節理の絶壁が約1キロ続く、国の名勝・天然記念物です。
聖地巡礼のおすすめルート
金沢・浅野川と市場ルート
近江町市場で海鮮丼を味わい、浅野川の天神橋から常磐橋下流へ。ひがし茶屋街も近く、金沢観光と一体で楽しめる半日コース。運が良ければ友禅流しの実演にも出会えます。
福井・東尋坊ルート
東尋坊の断崖を歩き、三国温泉 望洋楼に泊まる、日本海の絶景1泊コース。夕日の時間帯の東尋坊は、本作の情感そのものです。
富山・レトロ建築ルート
旧小杉郵便局を訪ねる、射水市の建築めぐりコース。明治期の擬洋風建築が現存し、雪子の住まいとして使われた佇まいをそのまま見ることができます。
評価・反響
評価スコア
映画レビューサイトでの評点は分かれており、エッセイの映画化という難題ゆえに賛否が並びます。一方で北陸の風景描写と、三國連太郎ら重鎮の演技については一貫して高い評価を受けています。
好評だったポイント
五木寛之の思想を映像で語ろうとした意欲作として、また北陸の風景映画として、根強く愛されています。