作品紹介
『年下の男』は、2003年1月9日から3月20日までTBS系列「カネボウ木曜劇場」枠(毎週木曜22時)で全11話が放送された連続ドラマである。脚本は『ひらり』『私の青空』など数々のヒット作を手がけた内舘牧子。キャッチコピーは「底なしの幸福に堕ちたいんです。」。平凡な毎日を送る30歳のOL・山口千華子(稲森いずみ)は、仕事にやりがいを感じられず、恋人もいない日々に虚しさを抱えていた。ある日、通いつけのスポーツジムで大人の雰囲気を漂わせる43歳のバツイチ男性・伊崎駿(高橋克典)に出逢い、強く惹かれていく。思い切ってプロポーズするも「女は必要ない」と一蹴されてしまう。傷心の千華子の前に現れたのは、弟の友人である8歳年下の22歳・辻謙吾(賀集利樹)だった。
一方、千華子の母・花枝(風吹ジュン)もまた伊崎と出逢い、51歳にして女としての情熱を取り戻してしまう。母と娘が知らぬ間に同じ男を愛するという禁断の構図が生まれ、やがてその事実が明るみに出たとき、温かかった山口家は崩壊の危機に直面する。父・勇一郎(平田満)の葛藤、姉弟の確執、そして「年齢」という社会の呪縛に翻弄される登場人物たちが、それぞれの答えを見つけていく全11話の愛憎劇である。
主題歌はSINBAの「華」。共演には麻生祐未、星野真里らが名を連ね、全話平均視聴率12.8%を記録。TBS木曜劇場枠の歴代視聴率ランキングで第2位に輝き、翌2004年には同じ稲森いずみ・高橋克典のコンビで『バツ彼』が制作されるなど、その人気ぶりを証明した作品である。
話題になったポイント
内舘牧子が描く「母娘の禁断の三角関係」
本作最大の衝撃は、母と娘が同じ男性を愛してしまうという設定にある。恋愛ドラマにおける三角関係は珍しくないが、それが実の母娘であるという点が視聴者に強烈なインパクトを与えた。内舘牧子の筆は容赦なく、母・花枝が不倫に溺れていく姿と、その事実を知った千華子がアイロンのかかったシャツをハサミで切り裂くシーンは「ドラマで一番の山場」と語り継がれている。
稲森いずみと高橋克典の圧倒的な存在感
主演の稲森いずみは、結婚への焦りと恋愛への不器用さを抱える等身大の30歳を繊細に演じ、物語後半での凛とした自立へ至る変化を見事に表現した。一方の高橋克典が演じる伊崎駿は、「男も女も1日1日を必死に生きてる奴が一番色っぽい」という名台詞に象徴される、筋の通った大人の男の魅力で視聴者を惹きつけた。
2003年だからこそ成立した「攻めた」恋愛ドラマ
視聴者の間では「現在のドラマでは考えられない尋常ではないドロドロさ」という感想が多く聞かれる。年齢差恋愛、親子間の恋敵関係、不倫の是非といった刺激的なテーマを真正面から扱い、コンプライアンスが厳しくなった現代では実現が難しいであろう過激な展開が毎話繰り広げられた。しかしその根底にあるのは「これからの新しい家族の形」への問いかけであり、最終話では「責任は持たないが、愛情は一生持つ」というメッセージが提示される。
ロケ地ガイド
東京・深川/銀座エリア
主人公・千華子が暮らす山口家の周辺として使われたのが、東京都江東区の深川エリアである。下町情緒あふれる街並みが、温かくも脆い家族の日常を映し出す舞台となった。
- 古石場川親水公園の関口橋:千華子が日常的に通る散歩道として登場。深川の水辺の風景が、主人公の心情を静かに映し出すシーンで繰り返し使用された。
- 奥野ビル(旧銀座アパートメント):千華子が勤務する広告会社の外観ロケ地。1932年竣工のアール・デコ調の建築が、物語に重厚な雰囲気を与えている。
東京・臨海/汐留エリア
2003年当時、再開発が進んでいた臨海副都心や汐留エリアは、ドラマの中でデートスポットや待ち合わせの場所として華やかに登場した。
- パレットタウンの大観覧車:お台場を象徴する大観覧車は、序盤のデートシーンで印象的に使われた。
- カレッタ汐留:2002年末にオープンしたばかりの商業施設で、当時の最新スポットとして劇中に登場。
- 竹芝埠頭:東京湾を望むウォーターフロントで、複数回にわたって登場する重要なロケ地。
- 東京国際フォーラム:印象的な雪のシーンの舞台として第3〜4話で登場。
東京・青山/武蔵野エリア
千華子や謙吾の行動圏として描かれた青山・吉祥寺エリア。
- リストランテ・サバティーニ青山:本格イタリアンレストランでの食事シーンに使用。
- 成蹊大学:年下の恋人・謙吾の大学生活の舞台として登場。
- 根津神社:登場人物たちの心の整理をつけるシーンの背景として使われた。
京都・嵯峨野/嵐山エリア
第7〜8話の京都ロケは、本作屈指の見せ場となった「修羅場」シーンの舞台である。
- 常寂光寺:母娘の関係が決定的に変わる重要な場面の舞台。
- 桂川の渡月橋:嵐山のシンボルが印象的に映し出された。
- 湯豆腐嵯峨野:京都旅行中の食事シーンに登場。
- 化野念仏寺参道:物語の転換点となるシーンの背景に使われた。
京都・祇園/東山エリア
祇園や東山の風情ある街並みも、京都ロケの重要な舞台となった。
- ねねの道:高台寺から清水寺方面へと続く石畳の散策路。
- 二寧坂(二年坂):清水寺へと続く風情ある坂道で京都散策のシーンに登場。
- 白川の辰巳橋:祇園の白川沿いに架かる小さな橋で、夕暮れ時の印象的なシーンが撮影された。
- 京都東急ホテル:京都滞在中の宿泊先として登場。
聖地巡礼のおすすめルート
東京ウォーターフロントコース(半日)
銀座の奥野ビルからスタートし、東京国際フォーラムの壮大なガラス建築を見学。その後、カレッタ汐留で食事を楽しみ、竹芝埠頭で東京湾の景色を堪能する。
京都・嵯峨野〜祇園満喫コース(1日)
午前中は嵐山エリアからスタート。渡月橋を渡り、常寂光寺へ。昼食は湯豆腐嵯峨野で。午後は東山方面へ移動し、二寧坂からねねの道を散策。夕暮れ時には白川の辰巳橋で幻想的な風景を楽しむ。
視聴者の声・評判
評価スコア
映画・ドラマレビューサイトFilmarksでは平均3.6点(5.0点満点)を記録。全話平均視聴率は12.8%で、最高視聴率は14.2%(第4話)。TBS木曜22時枠の歴代視聴率ランキングでは第2位に輝いている。
好評だったポイント
視聴者から最も多く挙がるのが「ドロドロ展開の中毒性」である。「超ドロドロでおもろかった」「毎日えぐっー、きっつーと叫びながら見た」など、次の展開が気になって止められないという声が圧倒的に多い。一方で「回が進むごとにとても深い内容で、最終回では感動して涙がとまりませんでした」という声に代表されるように、単なる愛憎劇に留まらない人間ドラマとしての深みを評価する意見も根強い。キャストの演技力への評価も高く、特に風吹ジュンの「多面的で人間らしく魅力的な母親像」、平田満の「伊崎以上に誇り高い父親像」が絶賛されている。