作品紹介
『男たちの大和/YAMATO』は、2005年12月17日に東映系で公開された戦争映画です。辺見じゅんのノンフィクション『決定版 男たちの大和』を原作に、終戦60周年記念作品として製作されました。監督・脚本は佐藤純彌、製作は角川春樹、音楽は久石譲、主題歌は長渕剛「CLOSE YOUR EYES」。製作費は約25億円と、2005年公開の日本映画で最高額を投じた超大作となり、興行収入50.9億円を挙げて同年の邦画興行収入第1位に輝きました。
物語は現代の鹿児島・枕崎から始まります。2005年4月、老漁師・神尾克己(仲代達矢)のもとに、内田真貴子(鈴木京香)と名乗る女性が訪ねてきます。戦艦大和が沈んだ地点まで船を出してほしい——彼女が大和の乗組員・内田二等兵曹の養女であることを知った神尾は、自らも大和の乗組員だった過去を胸に、小さな漁船「明日香丸」を沖へと走らせます。そして60年間閉ざしてきた記憶を、ゆっくりと語り始めるのです。
回想で描かれるのは、昭和19年から20年にかけての大和の日々。海軍特別年少兵として乗艦した少年時代の神尾(松山ケンイチ)と、彼を鍛え、守る森脇庄八二等主計兵曹(反町隆史)、内田守二等兵曹(中村獅童)たちの姿。レイテ沖海戦での惨敗を経て、大和は護衛機なしで沖縄への特攻に向かうことになります。蒼井優、渡哲也、奥田瑛二、長嶋一茂、高畑淳子、余貴美子、池松壮亮ら、豪華な顔ぶれが少年兵たちを取り巻く人々を演じました。
話題になったポイント
全長190メートル、原寸大の「大和」ロケセット
本作最大の話題が、広島県尾道市向島町の日立造船西工場跡地に建造された原寸大ロケセットです。全長約190メートル、幅約40メートル、高さ約15メートル。46センチ主砲(第2主砲)や副砲、高角砲、そして「大和坂」と呼ばれる傾斜した木甲板までが再現されました。映画公開に先立って2005年7月17日から2006年3月31日まで一般公開され、尾道駅から渡船と送迎バスを乗り継いで訪れる見学者が殺到。週末には乗船制限がかかるほどの人気となりました。
角川春樹の復帰第一作という物語
本作は、原作者・辺見じゅんの弟である角川春樹にとって、実に12年ぶりとなる大作プロデュース作品でした。収監中に姉から映画化の話を聞き、「もし出所したときにはお手伝いします」と約束したことが実現した形です。東映の岡田茂・岡田裕介親子に請われて製作者として復帰した経緯そのものが、公開前から大きく報じられました。
賛否を呼んだ「戦争の描き方」
迫真の戦闘描写と、少年兵たちの生と死を真正面から描いた本作は、公開当時から評価が大きく分かれました。「紛れもない反戦映画だ」という受け止めがある一方、「壮大な音楽が常に鳴り響き、戦争賛美的に感じられた」という批判も少なくありません。この議論そのものが、本作が広く観られたことの証でもあります。
ロケ地ガイド
尾道エリア(大和ロケセットと少年時代)
本作の撮影の中心となったのが広島県尾道市。向島に建てられた原寸大セットを軸に、周辺の海岸や町並みが少年たちの故郷として使われました。
- 日立造船:尾道市向島町の日立造船西工場跡地。ここに全長190メートルの戦艦大和の撮影用セットが建造されました。一般公開は2006年3月31日で終了し、セットは解体済みのため現存しません。
- 岩子島海水浴場:尾道市向島町岩子島。神尾克己が青春時代に訪れた、赤い鳥居のある海岸として登場します。海に立つ厳島神社の鳥居が印象的な、本作屈指の絵になるロケ地です。
- 土堂突堤:尾道市東土堂町。防波堤のシーンに使われました。尾道水道を望む、映画の街・尾道らしい風景です。
- 串の浜:尾道市浦崎町。神尾克己が恋人・野崎妙子(蒼井優)と別れる海沿いの道路として撮影されました。
呉エリア(大和の母港)
戦艦大和が建造され、そして出撃していった呉。現在も海上自衛隊の街として知られるこのエリアには、作品の記憶をたどれる場所が集まっています。
- IHI呉工場:呉市昭和町。戦艦大和が実際に建造されたドックにあたる場所です。
- アレイからすこじま:呉市昭和町。沖縄特攻へと向かう兵たちが出発した港として撮影されました。潜水艦を間近に見られる公園として、現在も人気のスポットです。
- 旧海軍墓地:呉市上長迫町。内田真貴子が訪れる「戦艦大和戦死者之碑」がある場所。長迫公園として整備されています。
- 大和ミュージアム:呉市宝町。10分の1スケールの戦艦大和で知られる「呉市海事歴史科学館」が、劇中の博物館として登場します。
- 折本マリンビル3号館:呉市宝町。戦艦大和の撮影用セットが組まれた場所のひとつです。
福山・舞鶴・滋賀エリア
広島県内の別の町や、遠く京都・滋賀まで、シーンに合った風景を求めてロケ隊は移動しました。
- 鞆の町並み:広島県福山市鞆町。常田澄夫と母・玉木ツネ(高畑淳子)が別れる、観音様が近くにある細い路地として登場します。江戸期の港町の面影を色濃く残す町並みです。
- 舞鶴赤レンガ倉庫:京都府舞鶴市北吸。旧海軍の軍需施設として建てられた赤レンガ倉庫群が、そのまま劇中の赤レンガ倉庫として使われました。
- 畑の棚田:滋賀県高島市畑。神尾克己が訪れる棚田のシーンが撮影された、「日本の棚田百選」にも選ばれた景勝地です。
枕崎エリア(現代の物語の起点)
物語の「現在」が展開する鹿児島県枕崎市。ここから明日香丸が大和の沈没地点へと向かいます。
- 枕崎漁港:枕崎市松之尾町。内田真貴子が船を出してくれる人を探していた漁港です。
- 火の神公園:枕崎市火之神岬町。内田真貴子と神尾克己が出会う場所として撮影されました。立神岩を望む、東シナ海に面した公園です。
聖地巡礼のおすすめルート
呉「大和のふるさと」半日ルート
いま最も充実したロケ地巡りができるのが呉です。大和ミュージアムで10分の1模型と資料展示をじっくり見学したあと、隣接する折本マリンビル3号館周辺を歩き、そこからアレイからすこじまへ。潜水艦が並ぶ独特の光景を眺めたら、IHI呉工場のドックを遠望し、最後に旧海軍墓地で「戦艦大和戦死者之碑」に手を合わせる——という、作品の重みを受け止めながら歩けるコースです。
尾道・向島 潮風ルート
尾道駅前から渡船で向島へ渡り、岩子島海水浴場の赤い鳥居を目指すコース。潮の満ち引きで表情が変わる海中の鳥居は、劇中の情景そのままです。尾道側に戻って土堂突堤から尾道水道を眺め、時間があれば浦崎町の串の浜まで足を延ばしましょう。なお、大和のロケセットが建っていた日立造船跡地は現在セットが解体されており、見学はできません。
枕崎「明日香丸」ルート
鹿児島まで足を延ばせるなら、映画の始まりと終わりを飾る枕崎へ。枕崎漁港でカツオの水揚げで賑わう港を眺め、火の神公園から立神岩と東シナ海を望めば、神尾が船を出した海の広さを実感できます。夕暮れどきの景色がとりわけ美しい場所です。
評価・反響
評価スコア
興行収入50.9億円で2005年の邦画興行収入第1位。Filmarksでの平均スコアは★3.5前後で、レビュー数は1万4,000件を超えています。公開から20年近く経ってなお、戦争映画の代表作のひとつとして語られ続けている作品です。