作品紹介
『湯を沸かすほどの熱い愛』は2016年10月29日公開の日本映画。中野量太監督のオリジナル脚本による長編商業デビュー作で、配給はクロックワークス。第40回日本アカデミー賞では宮沢りえが最優秀主演女優賞、杉咲花が新人俳優賞を受賞し、そのほか国内映画賞を数多く獲得しました。
幸野双葉(宮沢りえ)は、夫の一浩(オダギリジョー)が女と出て行ってしまい、家業の銭湯「幸の湯」を休業したまま、娘の安澄(杉咲花)とパートで暮らしています。ある日、双葉は末期がんで余命わずかと告げられます。残された時間で彼女が決めたのは、夫を連れ戻し、銭湯の煙突からもう一度煙を上げること。そしていじめに苦しむ娘を自分の足で立たせること——。やらなければならないことを、双葉はひとつずつ片づけていきます。
ロケ地の中心は栃木県足利市。銭湯「幸の湯」の外観と薪を焚くシーンは、足利市巴町にある実在の銭湯花の湯で撮影されました(浴室内部は東京都文京区にあった月の湯を使用、同館は2015年に廃業)。物語後半の家族旅行は静岡県の伊豆へ移り、御浜岬や伊豆・三津シーパラダイスといった駿河湾沿いの景色が広がります。
話題になったポイント
宮沢りえの代表作となった双葉
泣くべき場面で泣かず、笑うべきでない場面で笑う——双葉という人物の造形は宮沢りえの演技と不可分です。日本アカデミー賞をはじめ、ブルーリボン賞、報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞など、この年の主演女優賞をほぼ独占しました。
杉咲花のブレイク
いじめられ、それでも自分で立ち上がろうとする安澄役で、杉咲花は日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得。本作は彼女の名前を広く知らしめた一本として語られます。
「泣ける映画」の枠を超えた構成
余命宣告という王道の設定でありながら、双葉が抱えていた家族の秘密が段階的に明かされ、物語は単純なお涙頂戴に留まりません。ラストの解釈をめぐっては、公開から年月がたった今も議論が続いています。
ロケ地ガイド
足利エリア(栃木県)
幸野家の生活圏。本作でもっともロケ地が集中する街です。
- 花の湯:栃木県足利市巴町2541-1。薪でお湯を沸かす昔ながらの銭湯。「幸の湯」の外観と、双葉が薪をくべるシーンが撮影された、本作最大の聖地です。
- 足利織姫神社:栃木県足利市西宮町。229段の石段と朱塗りの社殿で知られる縁結びの神社。安澄が人助けをする場面。
- 北仲通り:栃木県足利市巴町。花の湯のすぐそば、一浩が知人と会う通り。
- メゾン・ジュネス:栃木県足利市今福町。一浩と鮎子が暮らしていたアパート。
- 本庄記念病院/緑ヶ丘育成園:栃木県足利市。双葉の通院・入院シーン。
- 川崎橋:栃木県足利市。終盤、霊柩車が渡っていく橋。
桐生エリア(群馬県)
足利の隣町。渡良瀬川沿いの鉄道風景が印象的です。
東京エリア
双葉の仕事と、夫を探す手がかり。
伊豆エリア(静岡県)
家族旅行のパート。物語がもっとも遠くまで行く場所です。
- 御浜岬:静岡県沼津市戸田。駿河湾に突き出た砂嘴で、富士山を望む絶景ポイント。
- 網元光徳丸 食事処 かにや へだ本店:静岡県沼津市戸田。高足ガニで有名な食事処。君江の職場です。
- 伊豆・三津シーパラダイス:静岡県沼津市内浦長浜。日本で最も古い歴史を持つ水族館のひとつ。
- いちごプラザ:静岡県伊豆の国市南江間。いちご大福のシーン。
- 伊豆フルーツパーク:静岡県三島市塚原新田。双葉が拓海に「目標」を渡す駐車場の場面。
- 道の駅みかも:栃木県栃木市藤岡町。旅の途中、拓海と出会う場所。
聖地巡礼のおすすめルート
足利・銭湯めぐりルート
JR足利駅から歩いて花の湯へ。営業日なら実際に湯に浸かって「幸の湯」を体感できます。そこから北仲通りを抜け、石段を上って足利織姫神社へ。足利学校や鑁阿寺とあわせれば、丸一日楽しめるコースです。
両毛レトロ駅舎ルート
足利から東武・JRを乗り継いで桐生へ。西桐生駅の木造駅舎を見て、上毛電鉄で富士山下駅へ。渡良瀬川の鉄橋を渡る車窓が、そのまま劇中のカットになります。
伊豆・家族旅行ルート
三島から伊豆フルーツパーク、いちごプラザを経て、伊豆・三津シーパラダイスへ。さらに西海岸を南下して御浜岬と網元光徳丸 食事処 かにや へだ本店まで。車があれば一日、公共交通なら一泊二日で幸野家の旅路をなぞれます。
視聴者の声・評判
評価スコア
Filmarksの平均スコアは★4.1と、2016年公開の日本映画では最高水準。第40回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞(宮沢りえ)・新人俳優賞(杉咲花)、第59回ブルーリボン賞主演女優賞、第38回ヨコハマ映画祭日本映画ベストテン第1位など、受賞歴も豊富です。
好評だったポイント
「宮沢りえの双葉が強くて優しくて忘れられない」「泣くつもりがなかったのに号泣した」「杉咲花の成長物語として観ても良い」「銭湯の煙突から煙が上がるカットが最高」——家族という言葉の定義を問い直す物語として広く支持されています。一方で「終盤の展開が詰め込みすぎ」「ラストの演出が賛否分かれる」という声もあり、あの結末をどう受け取るかが本作を語るときの中心になっています。